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防風林「対立、分断を越えて飢餓の危機回避を【2022年11月3週号】」

 ▼世界と日本の食料安全保障をテーマに農林中金総合研究所が開催したフォーラムで、同研究所の阮蔚(ルアン・ウェイ)理事研究員は「世界全体でみれば、食料供給の過剰時代は終わっている。一定部分は国内で生産し、守るべき」と強調した。喫緊の課題はロシアのウクライナ侵攻に伴う穀物・肥料流通の分断やブロック化だが、食料・飼料と燃料の穀物争奪戦や地球温暖化なども重要な問題とした。
 ▼今年の穀物生産量は世界的には減少が見込まれるものの、輸出が停滞しなければ供給できる量はあると分析する。しかし、アフリカ諸国が主に輸入していたウクライナ産小麦は輸出が難航。価格高騰と外貨不足で多くの国が買い付けできず、飢餓の危機に陥っていると指摘した。
 ▼また、トウモロコシや大豆は人口増加を超える伸び率で生産が拡大し、食肉需要に応じた餌用やバイオ燃料用の需要を支えてきたが、昨今は食用需要との競合が起きていると指摘。夏に欧米などを襲った干ばつなど気候変動に伴う減収リスクへの対応も急がれると言及した。
 ▼一方で「(飢餓回避には)ロシアの小麦が必要。開かれた穀物市場を維持すべき」とロシアとの分断回避も訴えた。相当な難題であるのは確かだが、地球の未来に向けて各国指導者の結束を促したい。