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平成30年7月豪雨 多くの支援で農業復興【11月2週号 岡山県】

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 【岡山支局】「こうして農業ができるのはみんなのおかげだ」と話すのは、倉敷市真備町の水川實夫〈みずかわ・じつお〉さん(78)。水川さんが代表を務める農事組合法人服部営農組合は、「平成30年7月豪雨」で甚大な被害に遭ったが、多くの支援を受け、その年の秋には麦の播種ができるまでに復旧した。同組合は、少子高齢化が進み、担い手が減った地元の農業を支えるため、基盤整備事業の一環として2013年2月に結成され、14年に法人化。地域の農地を集約し、米や小豆などを20ヘクタール作付けしていた。平成30年7月豪雨で、組合員の田畑は冠水し、作物は全滅。水川さんの自宅は高台にあったため難を逃れたが、中には家を失った組合員がいた。冠水した農地には車や土砂、崩壊した家の建材などさまざまなごみが大量に流入。大きなごみは、重機でトラックに積み込む作業をひたすら続けた。復旧作業で特に手を焼いたのがガラスの破片だ。手作業で一つ一つ取り除くため、1日かけても農地1枚すら終わらないことがあったという。ごみの撤去作業には延べ400人のボランティアと共に励んだ。土壌汚染調査があるため平年より遅れたものの、麦の播種に間に合わせることができた。冬には県内外から駆け付けた40人ほどの高校生と、延べ2500メートルに及ぶ用水路から数十トンもの泥を搬出した。「ボランティアの協力無しではここまでの復興は不可能だった」と水川さん。被災後、避難計画やハザードマップなどの話し合いで、地域の結びつきが強くなり、人とのつながりを強く実感したという。一方、不測の事態に備えるため収入保険に加入し、補償を確保した。現在は米、麦、小豆、大豆を23ヘクタールで栽培。地域の農地の多くを引き受けるとともに、他地域の農地の草刈りなど活動の幅を広げた。今後は若手の育成や新規作物に取り組むという。23年にはドローン(小型無人機)を導入するなど、作業効率を高め、安定した運営を目指している。水川さんは「みんな仲が良く、作業した後の憩いの時間が何よりも楽しい」と笑顔で話す。

〈写真:被災を乗り越えた田で水稲の生育を確認する水川さん〉