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価格低下、病害で廃業の危機 収入保険で乗り切る【11月1週号 山口県】

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 【山口支局】「この保険がなければ、間違いなく廃業していました」と話すのは、山口市徳地の岡本佳之さん(59)。ハウス6棟(19アール)で主にピーマン2品種を栽培する。これまで災害や病害で収量が減少したことは一度もなく、順調な経営を維持していた。ところが2021年、市場価格の低下で大きく減収し、収入保険のつなぎ融資を申請した。「電車が好きで、本が好きで、土いじりが好きだったんです」と笑顔で話す岡本さん。東京都出身で、国鉄や図書館での仕事を経て農家に転身した。縁あって山口市に移住。07年に同市徳地農業公社の「新規就農者技術習得支援制度」を利用し、研修を2年間受けた後に独立した。「安定した収量や運搬の負担を考慮し、ピーマンを主力野菜に決めました」と岡本さん。多い年で年間19トン収穫する。「この地域でNOSAIが講習会を開くというので、参加してみたんです。そこで収入保険を知りました。市場価格が下がった年や、各地で発生する自然災害を見ているので、不安とはいつも隣り合わせ。加入のために青色申告に切り替えました」。青色申告書の作成には専用ソフトを使う。日々の入力さえしておけば、誰でも簡単に取り組むことができる。そのほかの手続きもインターネットでできるためとても便利だという。順調だった農家生活は、21年に激変。市場価格の低下と長雨による斑点病が重なり、収入は大きく減少した。「経験したことのない事態に廃業を覚悟しましたが、つなぎ融資のおかげで乗り切れました」。気持ちを切り替え、ピーマンの定植に臨んだ今年4月、全体の葉がしおれているハウスがあることに気付いたという。原因を究明するため、文献などで調べ続けたところ、「ケラ」による虫害だと突き止めた。岡本さんは「収量は今年も平年より少ないです。農家になって今が一番の正念場です。でも、収入保険に加入しているので心の負担は少ないです。リスクは必ず存在するので、セーフティーネットとして収入保険に加入することが大切ですね」と話している。

〈写真:「NOSAI全国連のホームページに掲載される『加入者の声』をよく読みます。頑張っている全国の農家さんを見て、勇気をもらっています」と岡本さん〉