▼学校や事業所などで自動体外式除細動器(AED)を見る機会が増えた。突然の心停止に対応し、専門知識のない人も救命活動ができる。心肺停止時の救命率は1分ごとに10%低下し、救命活動は5分以内が望ましいという。救急車を呼んでも到着まで平均10分弱かかるそうで、助かる命が増えるならありがたい。
▼日本農業労災学会などが先ごろ開いたシンポジウムで、同学会顧問を務める東京農業大学の江口文陽学長があいさつし、車にAEDと挿管できるエアバッグを常に積んでいると明かした。専門は林学で、山に出かける機会が多いためとの説明だ。
▼ただ、救命活動の重要性は、高校生の頃に友人の父親がコンバイン作業中に亡くなった事故や、ハウスの土壌消毒中に倒れて後遺症が残った近所の農家の事例を経験し、強く意識したと話した。刃物や機械を扱う農作業では、一瞬の気の緩みが大けがや死亡事故につながる。農村部にこそAEDの設置を増やす必要があるだろう。
▼農作業従事者を対象とした労災保険の特別加入制度への加入も増えてほしい。危険性を放置したままでは就農希望者も二の足を踏む。