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収入保険で安心営農 鳥インフル禍から再起【9月1週号 埼玉県】

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 【埼玉支局】春日部市倉常の「相鴨飼育農場 倉常ファーム」では、八木橋喜一代表(75)、息子の正幸さん(51)、アルバイト2人で、アイガモを年間約4万4千羽肥育するほか、水稲8.1ヘクタールの栽培に取り組む。アイガモは孵化〈ふか〉場から仕入れた「チェリバレー」種のひなを約8週間かけて平均3.8キロほどに肥育し出荷。飼育場は四つの区画に分け、2週間ごとに隣の区画へ移動させて効率の良い出荷動線を確保している。ひなの区画は入れ替えごとに消毒する。成鳥の区画はわらを小まめに敷き込むなど衛生面には細心の注意を払っていたが、2021年に収入保険加入後、鳥インフルエンザが全国的に流行。ひなの仕入れ先だった千葉県の孵化場でも感染が確認された。「本農場への感染は確認されなかったので安心しました」と八木橋代表。「しかし、孵化場で鳥インフルが発生した時期のひなを入荷していたので、念のため1回転1300羽ほどを殺処分することになりました。大切に育てたアイガモが殺処分されることはつらかったですね」と唇をかむ。孵化場が再出荷するには約6カ月を要した。その間は収入が大幅に減ったため、つなぎ融資を申請し、アルバイトへの給与や畜舎の維持費に充てた。ひなの入荷は21年7月に再開。カモ肉の需要が増す年末には出荷量がおおむね回復していた。ところが、22年1月に再び千葉県の孵化場で鳥インフルが発生。飼育中のアイガモは発生前に入荷していたことと、保健所による検査で陰性と診断されたことから殺処分は免れたという。「今まで感染症とは無縁でしたが、2年連続で鳥インフルが発生したことは、とても恐ろしく感じます。収入保険に加入していなければ、経営の再建は難しかったかもしれません」と八木橋代表。「飼育羽数を以前の規模に戻し、『おいしい』と言っていただけるカモ肉を皆さんに届け続けたいです」と話す。

〈写真:「経営努力では避けられないリスクに備える重要性を再確認しました」と八木橋代表〉