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データ重視 業務用ブロッコリー効率生産【8月4週号 静岡県】

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 【静岡支局】浜松市の株式会社アイファームの池谷〈いけや〉伸二代表取締役(44)は、ブロッコリー延べ130ヘクタール(秋冬作75ヘクタール・春作55ヘクタール)を栽培。独自の農業経営管理システムを構築し、小型無人機(ドローン)や人工知能(AI)画像解析などの先端技術も積極的に取り入れる。池谷代表は2008年に建設業から農業に参入。耕作放棄地を積極的に借り入れ規模拡大を進めた。作業工程を分業化することで、従業員の技術習熟度が短期間で上がり、効率化につながっている。16年に法人化し、県内有数の農業法人となった。アイファームの農業は、データと効率性の重視が特徴だ。ブロッコリーは同じ圃場内でも生育にバラつきが出るため、市場規格に適合するサイズを選別して収穫すると、一つの圃場で何度も作業することになる。これを「ブロッコリー農家が抱える無駄」と考え、注目したのが業務用の出荷だった。業務用はカット野菜として出荷するため、サイズにかかわらずに収穫が可能だ。蓄積したサイズごとの重量データと、カメラ搭載のドローンが撮影した画像をAIで解析する技術を組み合わせることで、圃場ごとに収量が最大化するタイミングを判断して1度に収穫できるようになった。作業効率の向上でコスト削減と生産現場の労力削減につながったという。「自然災害は最大のリスク」と池谷代表。農業の難しさは「自分たちがどのようなリスクにさらされているか分かりにくいところ」と考え、蓄積したデータを活用して減災につなげる取り組みも進めている。詳細なデータの収集を始めたのは台風の被害調査がきっかけだった。当時は対応方法が分からず、まずは状況を確認するため被害圃場の定点観察を開始。植え替えるしかないと思っていた圃場の中に、回復が見込める場合があることに気づいた。「今までは感覚でやっていて、事実が分かっていなかった」と感じたという。その後もデータの蓄積を続け、現在では回復が見込める圃場の復旧作業を優先することが可能となった。さらに圃場ごとのデータと組み合わせ、早期に被害収量や被害額を算定することで、迅速な経営の立て直しを図る。これまでの取り組みが評価され、農林水産省と全国担い手育成総合支援協議会共催の「令和3年度全国優良経営体表彰」生産技術革新部門で農林水産大臣賞を受賞した。今後について池谷代表は「将来はAI画像解析技術と組み合わせ、より迅速な被害状況の把握を目指したい」と話す。

〈写真:商品開発にも力を入れる池谷代表。消費者ニーズを捉え、機能性表示食品としてのブロッコリーに取り組むほか、袋のままレンジで加熱できる商品などを開発する〉