【山形支局】「農家は経営者。世の中の流れを読み、適切な対策で経営を持続させる責任がある」と話すのは、鶴岡市蛸井興屋〈たこいこうや〉の佐藤憲章〈のりあき〉さん(46)。妻や2人の息子、近隣住民と協力して「はえぬき」や「雪若丸」など水稲約34ヘクタールを作付けている。2019年に収入保険に加入した。2年前に父から経営を引き継いだ際は、必要性をあまり感じず、次年の契約を見合わせようか検討していたという。しかし、20年になると新型コロナウイルスの感染が拡大。行動制限などで米の需給バランスが崩れて価格に影響することを見越し、加入の継続を決めた。予想が的中し、昨年は米価の下落で収入が大幅に減少した。「資材価格の高騰が重なり打撃は大きかったが、保険金を受け取り、経済的、精神的に救われた」と話す。「収入保険の加入継続は正しい判断だった。何が起きるか分からない時代に、手頃な保険料でリスク回避できる収入保険は必須」と信頼を寄せる。収入保険の加入に加え、経費節減を意識して経営を守る佐藤さん。前職のタイヤ販売で培った知識を生かし、自ら農機具を修理するほか、農薬・化学肥料を低減した栽培を実践する。農薬使用量を慣行栽培の3割ほどに抑えるほか、追肥量や消毒回数を減らしながらも高品質・多収量を実現できるよう研さんに励む。「農家の高齢化などを背景に、受託面積が毎年約3ヘクタールずつ拡大している。40ヘクタールまで増やして法人化し、従業員を1人雇用することが目標。農機具販売・修理部門を設け、経営を安定させたい」と佐藤さん。収入保険という味方を得て、新たな農業スタイルの確立を目指す。
〈写真:「幅広いリスクに対応しているのが収入保険の魅力」と佐藤さん〉