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トマト40段取り、年1200トン生産 セミクローズド型温室で養液栽培【8月2週号 山梨県】

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 【山梨支局】北杜市明野町の農業団地でトマトの養液栽培に取り組む有限会社アグリマインドは、セミクローズド型温室(※)約2ヘクタールで年間1200トンを生産する。「地域とのつながりを大切にしたい」と藤巻公史代表取締役社長(40)。地元の農産物直売所の指定管理者になるなど、地元農家と連携して地域の発展を目指す。同社はカゴメ株式会社が販売する生食用トマト「高リコピン」の栽培を依頼され、2014年に設立。強い農業づくり交付金を利用し、最先端の温室や設備を総工費9億円で整え、15年には10アール当たり70トンを超える収穫量を達成した。天然素材のココヤシ殻を培地にした養液栽培に取り組む。養液の成分を毎週計測し、栽培の段階に合わせて肥料を調整する。育苗は外部に委託し、12月半ばごろに苗を定植。2月初めから11月末まで、40段取りで収穫する。作業人員は通年で社員やパート、実習生ら60人。作業は写真付きのマニュアルで確認できるようにした。作業後、従業員が作業内容をシステムに入力するので、効率的な人員配置と労務管理に役立っている。藤巻社長は「経験や技術が無くても施設栽培に取り組める栽培・労務管理のパッケージができれば」と仕組みの開発に意欲を示す。現在は積算温度などを活用して環境を管理するほか、画像認識を基に人工知能(AI)が予想した出荷量や出荷日を参考に作業している。19年からは指定管理者として「あけの農さん物直売所」を運営。ほぼ一年中ある自社のトマトや加工品のほか、地元農家の野菜を多くそろえて集客する。1袋500円のトマト詰め放題が人気だ。コロナ禍になってからは野菜セットなどのネット販売も始めた。アグリマインドは今年、収入保険に加入。3年前、千葉県に温室を建設した矢先、台風による停電、その後の大雨で浸水被害に遭い、保険の必要性を感じた。基準収入が高いため、補償の下限を7割に設定して保険料を抑えている。
 ※セミクローズド型温室=設置数が少ない小さな天窓が特徴。側面のファンで外気を取り入れ、室内の圧力が上がると天窓が自動で開き空気を放出する。窓から外気を入れないので虫や病原菌の侵入を最小限に抑えられる。

〈写真:藤巻社長(奥)に温室の状態を報告する役員の西海健太さん(30)。「狙い通りトマトが生育すると、やりがいを感じますね」と話す〉