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流通コスト削減へ地域共同配送「やさいバス」実証実験【7月4週号 滋賀県】

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 【滋賀支局】草津市では、農家がウェブサイトに野菜を出品し、注文に応じて配送する青果流通システム「やさいバス」の実証実験を実施した。集出荷を個別で対応した場合の流通コスト削減や取引先拡大など、生産者から期待されている。実験を始めるきっかけとなったのは、「もっと手軽に地元の新鮮な野菜を購入したい」という要望が飲食店から市に寄せられたことだ。市内で生産された野菜の多くは、市場を通じて各地に出荷されるため、飲食店が地元の野菜を入手するには「郊外の直売所へ足を運ばなければならず手間がかかる」「目当ての野菜が売り切れている」などの不満の声があった。そこで関係者の目にとまったのが、静岡県の農業ベンチャー企業「やさいバス株式会社(加藤百合子代表取締役社長)」が開発した地域共同配送システム・やさいバスだ。登録農家が、同社のウェブサイトに出品野菜の写真を掲載し、買い手が付いたら、専用コンテナに入れて最寄りの「バス停」と名付けた共同の集荷場に納品。回収・配送は、地元の配送業者に委託する。コンテナを購入者が希望したバス停に届け、購入者は指定の時間以降に野菜を取りに行くという仕組みだ。
 同社では、販売額の15%を手数料として差し引いて生産者に支払い、購入者が送料385円(1箱当たり)を負担する。「やさいバス草津実証プロジェクト」は、9農家と8店舗が登録し、4月から3カ月間実施した。バス停は、農業の盛んな草津市山田学区と志津学区、飲食店の多いJR草津駅、JR南草津駅周辺など10カ所に設置し、トラックは毎週火、金曜日に巡回。今後、同社は実証結果を分析し、本格実施を目指す。プロジェクトに参加した草津市北山田の農業法人株式会社横江ファーム・横江秀美さんは、注文のあった「山東菜」を出荷した。「ホテルなど、今まで取引のなかったところから注文をいただけるようになった。ぜひ本格実施してほしい」と期待する。市農林水産課の棚橋智晴主査は「今回は葉物農家が多く、偏りがあった。出品される野菜の種類を充実させる手だてを考えていきたい」と話す。

〈写真:バス停を設置した草津駅前のホテル「ボストンプラザ草津」で野菜を受け取る〉