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首輪にGPS搭載 放牧牛の管理を効率化【7月1週号 秋田県】

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 【秋田支局】鹿角市の公共牧場・川島牧野では、県の「ICT放牧牛管理システム実証事業」を活用し、管理の効率化につなげている。衛星利用測位システム(GPS)が搭載された首輪型のモジュールを放牧牛に装着し、パソコンやスマートフォンで居場所を確認できる仕組みだ。15分おきに電波を受信し、居場所が分かる。実証2年目で、放牧安全祈願祭と衛生検査の日に合わせて装着した。同牧野は標高400メートル、総面積177ヘクタールで、山や谷が多く起伏に富んだ地形のため、草地は59ヘクタール。鹿角市や小坂町の畜産農家22戸の約110頭を放牧する。牧柵が無く、牛は4キロ四方を自由に移動するが、けがや病気で動けない牛、敷地内から出た牛は早期に発見しなければならない。また、繁殖を目的として放牧する種付け用の雄牛「まき牛」がいないため、発情した牛を見つけて人工授精で対応する。システムを導入するまでは、監視人兼家畜人工授精師の湯瀬英克さん(72)が広い牧場を見回り、すべて1人で管理していたという。湯瀬さんは「牧場を歩き回り、どこにいるか分からない牛を探していた。人工授精をすることが多い朝方は霧がかかり、牛を探すのが大変だった」と話す。実証事業では、県と鹿角市、県畜産農業協同組合、県立大学、システムを取り扱う凸版印刷で「ICT放牧牛管理システム有効利用検討チーム」を立ち上げ、昨年から運用。放牧牛管理の省力化や、発見遅れによる種付け遅延などのリスク軽減が期待されている。放牧場には電波塔に当たるゲートウェイ基地局を2基設置。牛は群れて移動する習性があるため、放牧する110頭のうち28頭にモジュールを装着した。「牛を探す時間や事故の発見が容易になった」と湯瀬さん。県鹿角地域振興局農業振興普及課の鈴木人志主幹は「どこの牧場も監視人は高齢化している。現システムの有効性を実証すれば普及できるのでは」と話す。

〈写真:GPSを搭載したモジュールを県立大学の研究員が取り付けた〉