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経費削減、土壌改良、増収 バイオ炭の効果発揮【5月2週号 山形県】

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 【山形支局】水稲65ヘクタールを柱に、大豆や野菜を栽培する有限会社米の里(鶴岡市藤島、代表=齋藤弘之さん・43歳)は、自家製のもみ殻くん炭を農地の全面積に施用し、増収と二酸化炭素(CO2)の削減に励んでいる。これは2021年に農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」で掲げるバイオ炭の農地施用の取り組みの一環だ。植物は光合成によって大気中のCO2を吸収し成長する。しかし、分解されて土に返るときに吸収した量と同量が大気中に排出されるため、CO2の削減にはつながらない。バイオ炭は木や竹、もみ殻、剪定枝などが炭化したもので、分解されにくい特性を持つ。農地に施用することで土壌改良や水質浄化のほか、CO2吸収効果で地球温暖化防止にもつながるという。同社では以前、ケイ素やカルシウム、石灰を圃場に散布していたが、毎年発生する大量のもみ殻の処分や肥料代の削減、土壌改良を図るため、3年前に取り組みを始めた。もみ殻くん炭を施用する際、製造するには手間がかかり、購入する場合はコストがかかる。同社は全自動もみ殻くん炭製造機を購入することでその問題を解決した。製造機を通年で稼働し、機械で細かく裁断したもみ殻くん炭を春と秋に分け、10アール当たり500リットルを圃場に散布する。「機械の購入費用はかかったが、メリットは大きい。微生物が活発に働いて、根張りが良くなり、収量は約10%アップした」と齋藤さん。20年にはCO2排出削減などの取り組みを政府が承認する「J―クレジット制度」の対象にバイオ炭の農地施用が加えられた。庄内地域では今年2月に「庄内バイオ炭環境保全協議会」が発足し、6月からは農地への炭素貯留量に応じて企業から収入を得られるようになる。同社は同協議会の会員となり、地球温暖化防止と収入増をさらに図る考えだ。近年は環境保全に関心を持つ消費者が増えつつあることから、農業を通じたCO2削減を付加価値にした商品の販売を視野に入れている。齋藤さんは「米価の下落や資材・肥料などの高騰は今後も続くと予想される。身近にあるものを使って、低コストかつ環境に配慮した農業で、持続的発展を目指したい」と話す。

〈写真:「米作りを通して地球温暖化を防止していきたい」と齋藤さん〉