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技術改善で繁殖・肥育の生産性向上【4月4週号 長崎県】

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 【長崎支局】「新しい技術を積極的に取り入れ、これからの畜産を盛り上げていきたい」と話す南島原市加津佐町の綾部寿雄さん(69)。代表理事を務める農事組合法人花房牧場で、地域の人と協力しながら繁殖牛100頭、肥育牛148頭を飼育する。オリジナルの餌を製造するなど、生産性向上へさまざまな取り組みを実践中だ。同法人では、25年ほど前から自家配合飼料に豆腐かすを合わせて与える。綾部さんは「長崎県畜産試験場(現・長崎県農林技術開発センター畜産研究部門)で豆腐かすを使って餌を与えていたのを見て、繁殖牛でも代用できないかと着目したのがきっかけ」と話す。「豆腐かすは産業廃棄物として出されており、環境にもいいと考えた。地元の豆腐店から出される豆腐かすを活用し、今までと変わらない間隔で分娩ができている」。現在、飼料が高騰する中で、周りの力になればという思いから、取りに来てもらえる人に限定して販売するという。県平均より分娩間隔が長いという課題解決のため、さまざまな工夫を施した。「分娩監視・発情発見システム『モバイル牛温恵』を導入するほか、餌に青草も使用することで受胎率を向上させている」。イタリアンライグラスやソルガムなどを約2ヘクタールで栽培し、餌が一年中切れないように心がけている。「分娩間隔の短縮だけでなく、その後の事故を低減させなければ意味がない」と綾部さん。分娩後の事故を減らすため、与えるミルクの濃度や温度を調整できる「ミルメーカー」を導入する予定だ。子牛に合ったミルクを従業員でも作ることができ、体調を見ながら細かな調整ができるところに魅力を感じるという。綾部さんは、所属する大雲仙和牛部会で「牛の110番」制度を作り、分娩の手伝いや餌の与え方などの相談に乗るなど、地域の畜産経営者のためにも力を注ぐ。「今後は野菜農家と協力する必要がある。振興局に協力を仰ぎ、化学肥料を使わず、牛や鶏・豚の排せつ物を利用して野菜を栽培できるか研究している。循環型サイクルをつくり、環境に配慮した飼育方法を模索していきたい」と話す。

〈写真:豆腐かす入りの配合飼料を袋詰めする綾部さん(左)と従業員〉