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集落越えて農地集約 田園維持へ結束【4月2週号 石川県】

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 【石川支局】「地域の老若男女みんなで力を合わせ、この田園風景を守りたい」と話すのは、有限会社直海〈のうみ〉・釈迦堂〈しゃかどう〉営農組合(志賀町、水稲など計40ヘクタール)の岡野秀彰〈おかの・ひであき〉代表取締役(73)。法人として収益を追求するため、農閑期をつくらない作物を選定し、作業ローテーションを確立している。土地改良事業を機に発足した営農組合が前身の同社では、事業完了後の圃場で土壌改良に取り組み、地元の畜産農家から牛ふんなどを引き取り、農地に散布。水稲、大麦、ソバの収穫量を向上させた。同社の設立は2003年。離農者や耕作放棄地が増え始めた当時、集落を越えての組織は珍しかった。そんな中、同町直海地区の4集落、釈迦堂地区、松ノ木地区の農家が丁寧な話し合いを重ね、64戸の農地を集約し土地改良事業を進め営農組合を結成、さらに法人化に至った。6年前に始めた花き栽培は、冬季の労働力活用と収益向上、女性が作業しやすい作物として導入した。育苗後のビニールハウスで、フリージアの県オリジナル品種「エアリーフローラ」を年間1万本、切り花葉ボタンを年間1万2千本栽培し、県内外へ出荷する。今年は1月から3月にかけて気温が低く、エアリーフローラの生育が遅れた。開花調整は難しかったが、需要の多い季節に間に合わせることができたという。「若い世代には農作業経験の積み重ねが農業従事へのハードルを下げてくれる」と岡野代表。30~40歳代の兼業の社員には「農繁期の休日の1日だけでも」と声を掛け、大型機械のオペレーターを依頼する。農業用水や農道の整備には、全構成員で年に数回作業に当たり、組織の団結と農地への愛着を育む。岡野代表は「農業の楽しさを伝えていけば、担い手はおのずと育っていくはず。組織を継続するには収益も重要。米価の下落は大変な痛手だ。安心が担保できる収入保険の存在はありがたく、経営者なら加入すべき保険だ」と話す。

〈写真:フリージア「エアリーフローラ」は硬いつぼみの状態で出荷調製作業を進める〉