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6次産業に小規模酪農の将来性【2月4週号 長野県】

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 【長野支局】「酪農の一つのモデルを後続の世代に示したい」と話すのは、小布施牧場株式会社代表の木下荒野さん(33)。小布施町でジャージー牛の牧場を営む。同社が運営し、兄の真風さん(35)が担当する工房&カフェ「ミルグリーン」では、自社で搾った生乳を使ったジェラートやチーズを販売。小規模な酪農と高品質な6次産業で地域に還元しながら楽しみながら続ける「楽農」を掲げる。小布施牧場は、乳牛9頭と育成牛1頭、繁殖和牛8頭を飼育し、放牧面積は1ヘクタール。搾乳頭数を増やすよりも、生産(1次)、食品加工(2次)、販売(3次)まで自社で取り組む6次産業に、小規模酪農の可能性を見いだしている。代表を務める荒野さんは北海道の酪農学園大学を卒業後、県内の牧場に就職。その後、ニュージーランドの牧場で働く機会を得た。「英語が話せたわけではないですが、飛び込みました。現地では仕事の後に英語を毎晩自習しました。何とかなるものですよ」と振り返る。国内外での酪農生活の中で、生まれ育った小布施町で牧場を営む構想を固め、2018年に起業した。同町はブランド「小布施栗」の産地で、6次産業が活発だ。その取り組みに学び、荒野さんは当初から6次産業化を目指し、ホルスタイン種ではなく、あえてジャージー種を選んだ。ジャージー種は、乳量は少ないものの、ミルクは脂肪分やタンパク質が高くコクがあり、「ゴールデンミルク」とも呼ばれる。「ジャージーは小柄で飼いやすく、人懐こくてかわいいです」と荒野さん。ミルグリーンでは、近隣地域からのリピーターが多く、コロナ禍の影響は無いという。人気の商品は自社で栽培した小布施栗のジェラートだ。夏季の放牧地は、遊休耕地を整備して景観を整え、クラフトビールやリンゴジュースの搾りかすを飼料に使うなど、地域内で循環する酪農を意識した。荒野さんは「酪農を苦労とは感じません。自分のやりたいことをしているので充実しています」と力強く話す。

〈写真:ミルグリーンの前で荒野さん(右)と真風さん〉