▼1854年11月5日に起きた安政南海地震の際、暗闇の中を津波から逃げる人たちの目印にと稲むらに火を付けた濱口梧稜(はまぐち・ごりょう)の逸話が「稲むらの火」だ。東日本大震災を教訓に制定された「津波対策の推進に関する法律」では、この逸話を踏まえ、11月5日を「津波防災の日」とした。津波防災について、国民が理解と関心を深める日と位置づけている。
▼前後の期間を含め、各地で防災訓練などが予定されている。新型コロナの渦中だからこそ、発災時の安全確保や救急用品の準備、避難場所など地震と津波に備える事項を再確認しておきたい。
▼史実では、紀伊水道・四国南方沖の海域を震源とする安政南海地震の前日、東海・熊野海岸沖を震源とする安政東海地あ震が起きている。連日の大地震はまさに想定外。東海、近畿を中心に石碑や古文書など多くの記録が残る。
▼日本などが提案し、国連も11月5日を「世界津波の日」と定めた。「稲むらの火」の教訓は海外にも広がっている。