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耕作放棄地を放牧地に 地域の負担軽減、牛は健康【10月3週号 富山県】

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 【富山支局】「地域の環境保全に貢献するだけにとどまらず、立山観光の見どころの一つにしたい」と話すのは、立山町で肉用牛の繁殖から肥育までの一貫生産に取り組む株式会社森川牧場(肉用牛240頭)代表の森川明浩さん(44)。同町横江地区の耕作放棄地を活用した放牧で、地域住民の負担を軽減し、牛の健康管理につなげている。同地区の集落では、地域住民主体で定期的に耕作放棄地を整備してきた。しかし、住民の高齢化に伴い整備活動の継続が困難になってきたため、他地域で放牧事業に取り組む同牧場に管理が依頼された。耕作が放棄されていた1.5ヘクタールの土地を整備し、牧草をまき、鉄線で囲んで放牧地を造り、今年初夏から順次放牧を開始。耕作放棄地が放牧地に変わったことで、住民の管理の負担が減り、土地の保全や景観づくりに役立っている。近くの駐車場に車を止めて牛を見に来る人がいるなど、立山観光にも一役買う。放牧することで、餌やりや牛舎の清掃といった日常的な仕事が軽減され、牛は歩き回ることで足腰が丈夫になる。蹄の定期的な手入れが必要なくなり、ストレス解消につながった。森川さんは「牛は健康な状態になって牛舎に戻り、飼育の負担が軽くなる。放牧は牛と管理者側の双方にメリットがある」と話す。環境が変化してすぐ順応する牛もいれば、体調に異変を来す牛もいるという。「最初に放牧したときは、思ったほど牧草を食べていなかったので、草を一度刈り、植生を調整した。環境を整えるのも大事なこと」と森川さん。「放牧地を拡大して頭数を増やし、地域と牛の双方に有益なものであるようにしていきたい」と話す。

〈写真:広い土地に放牧することで牛たちは足腰が丈夫になり健康になって牛舎に戻ってくるという〉