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果樹の凍霜害対策にオイルヒーター復活【10月1週号 山形県】

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 【山形支局】南陽市宮崎で果樹を栽培する高橋善一さん(69)は、果樹の凍霜害対策として、50年ほど前に譲り受けた「リターンスタックオイルヒーター」の復活に励んでいる。今年、凍霜害でサクランボに大きな被害を受けた高橋さんは、新たな対策を検討した。散水氷結法や温風式防霜機などの方法がある中、費用や効果などを総合的に考えた結果、「燃料を燃やし、煙突から排出される熱で園地を温めるこのヒーターが一番良い」と復活に乗り出した。高橋さんが所有するヒーターは燃料タンクが壊れていたため、精密機械の設計や組み立てを手掛ける高畠町の「有限会社秀機」に修理を依頼。同社ではヒーターを実寸し、その仕組みを細かく調査して設計図を新たに作成した。ヒーターのタンクには燃料の投入口があり、3段階の空気調節が可能なふたを開けて着火する。煙突部分は直径10センチ、高さ100センチで、上下に開閉できるかさがあり、閉じると消火するという。さらに直径6センチ、高さ40センチのパイプが煙突とタンクをつなぎ、タンク内へ熱と空気を循環させる仕組みになっている。同社によると、商品化に向けてステンレス製の試作品を製造していて、使用燃料は従来の重油から灯油に代わるという。高橋さんは今年8月、自身のサクランボ園でヒーターの燃焼実験を農家仲間に紹介した。灯油10リットルを使用した結果、空気穴一つで8時間、二つで5時間、三つで3.5時間の燃焼時間を記録。高橋さんは「灯油15リットルだと、夜から翌朝まで燃焼できるのではないか」とみている。JA山形おきたま営農経済部園芸生産指導課では、商品化されれば販売を検討したいという。同課の渡部正志課長は「今後は県にも協力を依頼し、実証データを積み上げたい」と話している。

〈写真:農家仲間とヒーターの燃焼実験をする高橋さん(右)〉