▼家庭菜園をする人の約3割がコロナ禍2年目の今年から始めたとの調査結果をタキイ種苗が発表した。20歳以上の男女600人を対象に、7月にウェブ上で調査した。家庭菜園の経験者は全体の半数で、実施中はその半数だ。家庭菜園をする人の9割以上が今後も続ける意向と回答している。
▼コロナ禍による外出自粛期間が長期化する中、おうち時間の過ごし方として家庭菜園が人気だと聞く。調査は、それを裏付ける内容になった。新たに始めた理由は「趣味として楽しむ」が6割、「新鮮な野菜を食べる」が5割、「家計の節約」が3割の順だ。
▼家庭菜園を経験して感じた点には「農家・生産者のすごさ」「野菜作りの大変さ」が挙がり、「知識を増やしたい」と意欲を示す人もいる。実際に、庭付き住宅への引っ越しや新たな畑の購入・賃借など行動した人も家庭菜園実施者の2割に上るという。
▼農業・農村振興や食料自給率向上の各施策を推進する上で、国民的合意の形成は欠かせない。しかし、農村人口の減少や都市化の進展で食と農の距離が拡大し、消費者が農を身近に感じる機会は急速に失われていた。コロナ禍は、人類にとって最悪級の災禍であるのは確かだが、従来型の社会の継続でよいのかと考え直す機会にもなったのではないか。食と農が国民の身近にある社会づくりへの転機になれ、と願っている。