▼「この時期だけ騒がれても」との声もあると聞くが、3月11日を忘れることはできない。東日本大震災から10年を迎え、メディアの特集企画も増えてきた。人の力など何も及ばない災害に遭い、亡くなられた方々に改めて哀悼の意を、さらに復旧・復興に励む方々には敬意を表したい。
▼政府は、復興期間を2020年度までの10年間と定め、交通網などのインフラを整備し、高台移転なども含めた生活再建など環境整備を進めてきた。政府が公表する数値や事例では、課題がありながらも成果を挙げ、前に進んでいるようだ。本当かもしれないが、現地で生活する人たちには、他人に言えない葛藤もあるだろうと想像する。
▼例えば、沿岸に整備された高い防潮堤。海が見えない場所はふるさとではないと他県に転居した人の話が報道された。山育ちの身にも気持ちは分かる。幼いころから見慣れた風景があるから懐かしく、帰りたい気持ちも高まる。壁が風景では都市部のビルと変わらない。
▼新しい町並みなどが、生活する人のふるさとの風景になる日を望んでいる。