自粛、巣ごもりなど「3密」回避の生活はすでに1年近い。新型コロナウイルスの感染収束はいまだに見通せない状況にあるが、コロナ後を見据えた新たな社会・経済のあり方を模索する動きは始まっている。人口の一極集中や効率重視の経済が感染拡大の一因と指摘され、田園回帰など地方への人の流れや小規模・分散型である農業・農村の機能は、持続可能な社会の構築にも貢献するものと期待されている。コロナ禍は、催事の中止や飲食店の時短営業に伴う業務需要の落ち込み、観光農園の集客減少など農業・農村にも多大な影響を及ぼした。すぐに正解は見えなくても、農業・農村側から動き、発信することで希望は生まれる。「農動的 ―― ここから始めよう」をテーマに、創意工夫で一歩踏み出そうと動く取り組みを特集する。
(2~3、5面・新年号企画)
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やろうぜ!都市農業 都内での就農希望者集う ―― 東京NEO-FARMERS!(東京都)
東京NEO〈ネオ〉-FARMERS〈ファーマーズ〉!は、東京都内で新規就農した非農家出身者や就農を目指す人、農業関係者など約100組が所属。就農者の多くが青梅市や瑞穂町など東京西部で経営し、個別にグループを組んで共同出荷するなど連携している。昨年7月に地元・青梅市で独立就農し、住宅街の畑2枚(合計30アール)で野菜約50品種を栽培する、はらぺこ農園園主の川崎祐樹さん(34)は、3人の先輩メンバーとともに、自家産野菜を消費者に定期的に提供するCSA(地域支援型農業※)を実践。配達ではなく、受け取りに来てもらうことで、地域全体の認知度を高めたいと活動する。
〈写真:川崎さん(前列左)と共にCSAに取り組む先輩農家。KAJIYA FARM園主の志井淑子さん(前列右)、繁昌農園農場長の繁昌知洋さん(後列左)、lala farm table農園主の奥薗和子さん〉
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まかせろ!町のPR 独自ブランドを展開 ―― GOTTSO阿波(徳島県阿波市)
徳島県阿波市の若手農業者グループ「GOTTSO〈ゴッツォ〉阿波」(寺井稔会長、40歳)は、独自ブランドの白ナス「GOTTSO美〈び〉~ナス」とミニハクサイ「ミルフィ~菜〈な〉」を柱に、地域農業の振興と阿波市の魅力PRに力を注いでいる。阿波市観光協会所属のグループとして、各地のイベントに参加。試食販売などを通じて認知度を高めてきた。美~ナスは市と県の特産にも認定されており、販売促進の支援もある。将来的には市外にも生産者を増やし、県全体で盛り上げていきたい考えだ。
〈写真:GOTTSO阿波のメンバー。前列中央が寺井会長(写真提供=GOTTSO阿波)〉
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届け!茶を愛する心 小学生に入れ方を指導 ―― お茶屋戦隊茶レンジャー(静岡県富士市)
君も茶〈チャ〉レンジャージュニアにならないか ―― 静岡県富士市の茶農家7人が「お茶屋戦隊茶レンジャー」を結成し、茶葉や急須などを持参して市内の小学校でおいしいお茶の入れ方を教えている。ペットボトル飲料が主流の今日、産地振興や急須で入れる茶文化の継承を目的に、毎年10月中旬から始動し、年度内に15校ほどに赴く。子どもたちに「本物」の味を知ってもらうため日々闘う彼らの活動を取材した。
〈写真上:茶レンジャーの教えを受けてお茶を入れる児童ら〉
〈写真下:お茶をこよなく愛す茶レンジャー〉