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防風林「動植物の現象観測をやめてよいのか【2020年11月3週号】」

 ▼気象庁は、動植物の初見や初鳴き、開花、落葉などを確認する生物季節観測の種目・現象を変更すると発表した。現在は、全国の気象台・測候所58地点で植物34種目、動物23種目を対象とするが、来年1月からアジサイの開花など植物だけの6種目9現象に見直す。
 ▼気象台などの周辺環境が変化し、植物は標本木の確保が難しく、動物は見つけるのが困難と説明する。しかし、1953年から70年近く蓄積してきた記録の中断に問題はないのか。同庁の指針では、観測は季節の遅れ進みや気候の違いなど総合的な気象状況の推移を把握することが目的だ。地球温暖化が及ぼす動植物への影響をみるなど価値のある情報と思えるが。
 ▼四季が明瞭な日本では、人の生活や文化と動植物の変化が密接に関わってきた。ツバメの飛来に春を知り、セミの鳴き声に夏を感じ、紅葉が広がる秋の風景を堪能する。ただ、春にサクラの標本木前にテレビカメラが殺到し、何輪開いたと騒ぐのはいただけない。
 ▼暦にある七十二候は、約5日おきの気象、動植物の変化を表している。中国から伝わったが、日本に合う内容に見直されてきたそうだ。忙しい中でも、季節の変化を感じられるよう心にゆとりを持っていたい。