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防風林「篤農技術や民間育成品種を記録に残す【2020年6月3週号】」

 ▼1994年から2010年まで、農業共済新聞では『農を拓(ひら)いた先人たち』という連載を掲載した。明治から昭和にかけて日本農業の発展を支えた作物品種や農業機械、防除技術などを取り上げ、開発や普及に携わった農家や研究者の熱意や労苦を紹介する。
 ▼著者は、元農林水産技術会議事務局長の西尾敏彦氏で、長年、農業技術に関する歴史の発掘と記録に取り組んでいる。連載の記事はすべて農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)のサイトに掲載し、検索で見つかるためか、今も時々問い合わせがある。
 ▼担当者として何度か取材に同行し、有名品種の育成者からじかに経緯を聞くなど貴重な経験をした。同時に、農家の功績は試験場などと比べて記録が少なく、時間の経過とともに失われる心配があることも知った。
 ▼その西尾氏が、共著で『日本水稲在来品種小事典』(農文協)を出版した。「旭」「亀の尾」など「コシヒカリ」につながる品種だけでなく、地方の稲作を支えた295品種を網羅する。多くは農家の観察から生まれた。育成経過や名称の由来など読み物としても楽しめた。