▼事務所から皇居の半蔵門までは徒歩で5分ほど。お堀に面して桜などが茂る公園が整備され、よい散策コースだ。今年は新型コロナ禍のため、シートを敷いての花見は自粛となったが、歩く人やベンチで昼食をとる人は多い。
▼散策での楽しみがある。江戸東京・伝統野菜研究会会長の大竹道茂さんに教わったハマダイコンの観察だ。桜田門から半蔵門周辺にかけて、お堀の土手を覆う黄色い菜の花に混じり、菜の花に似た白い花の一帯がある。それがハマダイコンだ。
▼栽培種と同じアブラナ科ダイコン属で全国の海岸などに自生する。鎌倉では「鎌倉大根」と名付けてブランド化された。大竹さんは、徳川氏による江戸の都市づくりが始まるまで海岸が迫っていた歴史を踏まえ、「江戸城濠〈ほり〉大根」としてブランド化を構想する。
▼ダイコンと同様に根を食べることができ、実ざやもおいしいと聞き、様子を見てきた。お堀は立ち入り禁止だが、こぼれ種で広がっただろうハマダイコンが道路脇にも多い。
▼実ざやを軽く湯がいて試食する。ダイコンの香りとしゃきしゃきの歯触りが程よい。春を感じられる味だった。