▼大相撲春場所は、新型コロナウイルスによる感染症対策で史上初の無観客開催となった。テレビ中継では、力士の声やぶつかり合う音の迫力など新鮮に感じる点もある。ただ、観客のいない場内は寂しく、歓声がないと応援する気持ちの盛り上がりに欠ける。
▼これまで集団感染が確認された場所の共通点は、(1)換気の悪い密閉空間(2)多くの人が密集(3)近距離(手が届く範囲)で会話や発声が行われた――の三つだ。政府の要請を受けて、音楽ライブや演劇、スポーツイベントなどの中止や延期が続き、テーマパークや遊園地も当面の休業を決めている。
▼小中学校などの休校が始まり、昼休みに職場周辺を散策すると公園やコンビニで親子連れや子どもの姿を見かけるようになった。極力外出せずに家で待機すべきとの声もあるようだが、親の負担も含め、長期間我慢を強いる状態が続くことの弊害も考えるべきだろう。
▼現状を踏まえれば、やむを得ない措置と理解するが、気持ちは割り切れない。イベントなどの中止、延期、規模縮小といった自粛ムードの高まりは、精神的な負担となって滞留する。音楽やスポーツなどが日常と密接にある生活が、いかに大切なものかと改めて思う。
▼世界的な景気後退が懸念されるほど経済的にも深刻な状況となりつつある。だが、悲観してばかりもいられない。まずは牛乳乳製品や肉を消費し、花を贈るなど、自粛対応で打撃を受ける人を支えよう。一日でも早く日常生活を取り戻すために。