▼包丁はなくても電子レンジはある世帯が増えているという。小腹の足しになる一品から本格的な料理まで、温めれば食べられる便利な冷凍食品があるからだ。調理の苦手な若者に加え、「包丁も火も使わず安全」と冷凍食品を利用する年配者も多いと聞く。
▼今年は、食品冷凍が始まって100周年になる。1920年に魚を凍結する工場が北海道に建てられたことが始まりだ。市販品の第1号は、イチゴとミルクを凍結した31年発売の「イチゴシャーベー」とされる。しかし、資料が残っておらず、詳細は不明だという。
▼十数年前か、居酒屋の冷凍えだまめがおいしいと思えたとき、冷凍技術の進歩を実感した。それまでは、水っぽく実離れも悪く甘さも足りない印象が強く、率先して食べたいものではなかった。えだまめに関する研究の勉強会を取材し、ゆで方や時間、冷凍方法など、企業努力の結果と納得した。
▼冷凍食品が普及するきっかけは、64年開催の東京オリンピックとされている。選手村に集まる各国代表の食材を生鮮品だけでまかなうのは困難と考え、冷凍食品の開発を進めて活用した。味の評価も上々で、ホテルやレストランに冷凍庫の導入が進み、家庭用の電子レンジの普及とともに一般家庭にも定着してきた。
▼最近は、メニューの大半が工場からの冷凍食品というファミリーレストランもあるようだ。本格フレンチの冷凍食品専門店もある。いずれ三つ星の冷凍食品が登場するかも。おふくろの味が袋入りでは味気ないが。