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防風林「農村景観を楽しんでもらうために【2019年8月1週号】」

 ▼自宅近くに水道導水路に沿って整備された自転車歩行者道がある。サクラやケヤキなどの並木があり、日中はサイクリングやジョギング、散歩など多くの人が行き交う。道路に面している農地も多く、季節の野菜や果実、花などが並ぶ簡易な直売所がある。
 ▼自転車で少し遠出した際、前方に赤い板が見えた。近づくと1メートル四方ほどの四角く赤い枠が立っている。さらに近寄ると「農のある風景」の撮影ポイントと説明文があった。枠を通して農地を眺めると、手前に野菜、奥に果樹、その奥に住宅やマンションが見える。典型的な都市農業の景色だ。
 ▼インターネットの会員制交流サイト(SNS)では、見栄えよく盛り付けた料理をはじめ、特徴的で珍しい景色やイベント、仮装などスマホで撮影した画像や動画の投稿が盛んだ。目を引く画像は「インスタ映え」すると評価、拡散する。道沿いの赤枠は、そうした撮影用に活用してもらおうと設置したのかもしれない。
 ▼棚田や段々畑、古民家などの農村景観は、地域に人を呼ぶ観光資源として期待されている。SNSで注目を集めれば、宣伝効果は大きい。その一方、観光客が無断で農地に入ったり、路上駐車が多く作業に支障を来すトラブルもあるようだ。
 ▼農村地域の活性化に、都市住民やインバウンド(訪日外国人旅行者)を呼び込む「農泊」が注目されている。景観を発信する際には、駐車や撮影のマナー周知も徹底したい。楽しい思い出を持ち帰ってもらうために。