農業保険法がスタートし、今年は2年目。農業共済ならびに収入保険のセーフティーネットで農業者の経営安定に万全の体制で挑むNOSAI。近年の荒波のごとく押し寄せる異常気象に対し、迅速で的確な損害評価と共済金の早期支払いに努めてきた。農業ロボットやAI(人工知能)、ICT(情報通信技術)、小型無人航空機(ドローン)などを活用したスマート農業が脚光を浴びる中、共済金支払業務の効率化はもちろん、農家サービス向上に先端技術を取り入れるNOSAIも増えてきた。本特集では『スマートNOSAI』と銘打ち、各地での事例を紹介する。
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園芸施設などの損害評価を補完 ―― NOSAI沖縄・沖縄県
さまざまな産業でドローン(小型無人航空機)の活用が進む中、NOSAI沖縄(沖縄県農業共済組合)では、全4支所にドローンを配備し、園芸施設の損害評価などに役立てている。機体下部にカメラを搭載し、上空からハウスを撮影。ビニールの破れた箇所や程度など被害の全体像を把握し、人の目と足による作業を補完する。本年度は台風24、25号の被害を中心に、これまで60回ほど出動している。
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電子カルテで豊富な情報提供 ―― 十勝NOSAI・北海道
北海道の十勝NOSAI(十勝農業共済組合)は、2018年にタブレット端末機材(携帯型通信端末)193台を管内13の家畜診療センター・診療所に導入し、現場での診療情報の入力や、組合員への説明に活用している。事務所に戻ってからの診療情報入力の手間が省け業務の効率化につながるほか、過去の診療データをすぐに参照できることで、組合員農家に適切な診療を提供することに役立っている。
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樹種や樹齢を園地で確認 ―― NOSAI岩手・岩手県
NOSAI岩手(岩手県農業共済組合)では2010年から果樹の植栽図を作成し、農家サービスとして管内果樹農家に無料で提供している。紙媒体のほか、ネット回線を通じてスマートフォンやタブレット端末に送信可能だ。職員が作成を依頼された農家の樹園地に入り、GPS(衛星利用測位システム)端末機器に樹齢や品種を入力。送られてくるデータをコンピューターで可視化するGIS(地理情報システム)を元に植栽図を作成する。農家からは、薬剤散布時などにスマートフォン上などで病害にかかった樹木の位置を植栽図に記入できるほか、経営計画を立てる材料として喜ばれている。植栽図を利用する奥州市江刺愛宕(おだき)の果樹農家2人に話を聞いた。