鍛冶屋が作る鍬(くわ)や鉈(なた)、鎌などの道具類は、地域の土地柄や作物に合わせて使いやすくその形状を変え、農業などの"なりわい"を支えてきた。しかし近年では、大量生産される安価な既製品に押され、集落の生活や仕事に根ざした道具を作る鍛冶屋が減り、その鍛造技術が途絶えた地域も多い。高知県四万十町の十川地区に一軒だけ残る「勝秀(かつひで)鍛冶屋」を営んでいる松村幸作さん(80)に2015年、神奈川県から移住した菊池祐さん(33)が弟子入りした。縁もゆかりもない"ヨソモノ"が地域に溶け込みながら日々技術を磨き、松村さんが積み重ねてきた技術の継承に努めている。
(13面・特集)
〈写真:工房では「祐」「おんちゃん」と呼び合う師匠の松村さん(左)と弟子の菊池さん〉