▼一昨年の改正航空法の施行により、産業用無人ヘリコプターや小型無人航空機「ドローン」の飛行が規制されたことで、農薬散布など物を落下する行為は、国交大臣の申請・認可が必要になった。
▼農林水産省の改正技術指針は、薬剤散布の際に航空法順守はもとより、農林水産航空協会が適合機と認定した機体を使用し、適切に防除するよう指導する。今、空の産業革命とさえ期待されるドローンだが、農薬散布に限ってはまだ黎明(れいめい)期。
▼農水省の2016年度散布実績(1月末の速報値)では、産業用無人ヘリ100万ヘクタール(水稲86万ヘクタール)に対して、ドローンは543ヘクタール(同492ヘクタール)とごくわずか。ドローンの積載量や駆動時間では大区画圃場での効率性は望めなさそう。小区画水田に加え樹園地、共同防除が進まない山間地での活用を見いだすべきだろう。
▼農業分野での用途は、防除だけでなく小型カメラやセンサーを搭載すれば農作物の生育調査や自然災害による被害確認など無限に広がる。将来の農業を変えられるアイテムだからこそ、大切に育てていきたいもの。
▼航空法改正の発端は、首相官邸と観光地での無謀な飛行だった。今後の防除において、指導指針を無視した散布や、自分の操縦技術を過信したアクロバット的な飛行による大事故などが発生すれば、無人航空機全体の農業利用に対して厳しい規制が加わりかねない。黎明期ゆえに慎重な運用が望まれよう。