▼連休中の農村では近年、田植えや苗運びの風景を見かけなくなり人影もまばら。5月初旬の移植は、夏の猛暑期に登熟を迎えるため、不稔(ふねん)や乳白など品質低下になる恐れがあり遅らせる産地が増えたのだ。
▼都会から帰省する息子夫妻や孫の歓声に囲まれての田植えを楽しみにしていた農家は多いはず。帰省する側も、苗箱運搬などの手伝いで腰痛に悩まされずいい骨休みになる。考えてみれば、作業に携わる人が減ってしまう影響は少なくない。
▼それぞれの生活に戻る人々を見送ったあと、寂しさに浸る間もなく、田植え作業に追われる農家に戻るのだ。帰省者による補助作業は「猫の手」程度としても、農繁期には貴重な労働力。残された高齢農家にのしかかる負担は計り知れない。
▼実家の父親が病気で倒れ、連休が明けた休日になると妻子を自宅に残し、田植えだけのために高速道を往復する友人がいる。徐々に、親せきや近隣農家間の交換耕作も途絶えてしまい、水田の管理や維持への不安がつのるのは、収穫期とこの時期が多いかもしれない。
▼農地中間管理機構に水田を任せねばと、判断を迫られている農家も多いに違いない。高温登熟障害に極めて強い品種の育成・導入が、都市部からの「連休労働力」を再び呼び込める手だてにならないだろうか。農作業を手伝う子どもや孫たちが、農村部の新たな定住者となる契機になればいい。連休中の静かな水田には、「田園回帰」へのヒントが眠っていそうに思われるのだが。