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防風林「被災地の避難所にはプライバシー確保を【2016年4月4週号】」

 ▼熊本県から大分県にかけ、最大震度7を本震とした巨大な地震が余震を伴い頻発している。東日本大震災からの復興は道半ば、今度は九州での災禍だ。
 ▼幼児を抱く女性がインタビューで「ほかの被災した方に迷惑がかかるため、避難所でなく車で一夜を過ごした」と話す。家屋が倒壊し自ら被災者なのに、周囲の人々へ配慮し、炊き出しや飲料水の配給に手を貸す姿もある。先の震災で世界を驚嘆させた日本人の心がここでも見られた。
 ▼一方、保育所不足で待機児童数が全国上位にある都市で、住民の反対運動に抗しきれず保育所の新設を断念したとの報道。静かな環境を保てないことが住民側の理由だ。子育てを終えた世帯には「喉元過ぎれば」の問題で、これもまたわが国の現実。
 ▼震災犠牲者の多くが高齢者。体力の衰えによる逃げ遅れや、耐震性の低い古い家屋に住む割合が高いのも要因か。避難所生活では、お年寄り以外でも車や体育館で、長時間にわたり同じ姿勢を維持すると、発症の恐れがある「エコノミークラス症候群」への注意が呼びかけられている。
 ▼専門家の間では今、避難所における女性のプライバシー確保や防犯対策などが重要との指摘が多いという。周囲に気兼ねなく乳児への授乳や着替えができるよう、避難所内に他人の視線を遮ることのできるエリア設定などだ。互いの小さな心遣いが、被災者の心労を癒やせ高齢者や女性、子供、誰もが笑顔でいられる環境をつくるのかも。