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防風林「農業継続のための農道 命の道としての意識を【2016年4月3週号】」

 ▼原始社会の人間が初めて道を活用したのは、狩猟で動物を追う「獣道(けものみち)」、採取や農耕で通う「踏み分け道」とされ、これが今の農道の起源といえようか。
 ▼国内における農道の総延長距離(農水省2015年整備状況調査)は17万2400キロに及ぶ。地域差は大きいが全国平均の舗装率は36%、約56%は軽トラさえすれ違いが難しい1.8~4メートルの幅だ。交通を目的とした公道とは目的が異なり、営農そのものに支障がなければ問題はない。
 ▼とはいえ、農作業事故調査では毎年400人近い農家が死亡している現実がある。農機大型化とそれに伴う作業機幅の拡大が、農道の幅に合わなくなったとも考えられる。雑草管理が不十分な道路と法面(のりめん)との境界で脱輪・転落、木立や電柱に作業機をぶつけ転倒する事故事例もある。
 ▼農道の危険そうな箇所では、慎重な機械操作と標識などの適切な防止策を心掛けてほしい。取材時でも、渋滞回避なのか農道を猛スピードで走り抜ける車を見かける時がある。農家が作業中に軽トラックを停車していたら、突然「じゃまだ。どけろ」と怒る不届き運転者もいるという。
 ▼司馬遷の「桃李もの言わざれども下おのずから蹊(みち)を成す」との詩は、人徳のある者の周囲には自然に人が通う道が拓(ひら)かれる、との意味。桃李を農作物に替えて訳せば、営農者がいて作物が実る場所に自然と道ができる......となる。耕作放棄で草に覆われた農道を増やしてはならない。国民の食や生活をつなぐ命の道なのだから。