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防風林「映画も食も日本文化を誇れてこそ国際化【2016年3月3週号】」

 ▼庭のツバキが花を落とし、黒澤明監督の映画「椿三十郎」のワンシーンを思い浮かべた。武士は花の盛期に花ごと落とす姿を忌み嫌ったとされる。
 ▼映画では、隣の屋敷から通じる小川にツバキの花が流れ来るのを合図として使った。モノクロ映像ながら、なぜか赤い花弁が頭の中で再生する。同一脚本で製作のカラー作品では見たままだ。「世界のクロサワ」の色彩をイメージさせる技巧なのだ。
 ▼「七人の侍」では、泥まみれの戦闘シーンに映画ファンは驚いた。雨脚を映像化するため墨汁入りの水をまく。「天国と地獄」では身代金を列車から鉄橋の下に投下する場面で、民家が邪魔だと撤去させた逸話は有名。
 ▼そのため「黒澤天皇」だと関係者から敬遠され、「どですかでん」以降、国内で映画が作れず、「影武者」まで10年の空白期間があった。一方、小津安二郎監督は、日本人の日常の心の機微を映像化し世界で称賛された。
 ▼両映画監督とユネスコ無形文化遺産「日本食」との共通点は、世界で認められて初めて国民が認識したところだ。藤原正彦氏は『国家の品格』で、海外において母国文化を誇れる知識が真のグローバル化とした。伝統野菜や風習など埋もれる誇りは農村にも多い。