▼相手に「手の内」を悟られない、相手の手の内を読むことがビジネスやスポーツ、特に交渉ごとでは重要だ。環太平洋連携協定(TPP)交渉ではどうだったのだろうか。
▼米のMA米枠の拡大で済めば日本は譲歩する、という読みが参加国、特に米国の手の内だったのかも。合意後の影響評価の甘さや総合的なTPP関連政策大綱も、農家の不安を募らせるのみで起死回生策とは思えない。
▼政府は、農林水産分野の対策として「農政新時代」を掲げ、攻めの農林水産業(体質強化対策)への転換を図るとする。経営感覚が優れた担い手育成や国際競争力ある産地づくり、農産物輸出促進などの対策には、新規性は感じられず決定打となる「手の内」的な秘策は見えない。
▼そもそも、手の内とは弓道から派生した言葉で弓の握り方をさす。弓を手の平の中で絞り反動で強い矢勢が得られるのだ。初心者は肘の内側にできる青あざに耐え体得する。容易に手の内を教えてもらえることはない。
▼弓道には「正射必中」という言葉もある。心気を充実させ正しい姿勢と技で射れば、必ず的に命中するという。農家が不安を抱え心気が萎(な)えたままでは「的外れ」だ。まず、農家の元気を取り戻すことが肝要だ。