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防風林「雪の恐ろしさ、江戸時代の『北越雪譜』がもの語る【2016年1月4週号】」

 ▼最大級のエルニーニョ現象のせいか、気象は人知の及ばない動きをする。積雪の多い地域に雪が少ないと、暖冬傾向に首を傾げていた矢先の大雪、関東でも交通機関は混乱、転倒によるケガ人がでるなど油断は禁物。
 ▼「細(ささめ)雪」「沫(あわ)雪」など情緒的な別名をもつ雪。ひらひら舞う「雪花」は軽そうでも、しんしんと降る「牡丹(ぼたん)雪」は「どか雪」となり屋根を押し潰し、時には人の生命を奪うこともある。
 ▼江戸後期、越後魚沼の文人・鈴木牧之(ぼくし)が著した『北越雪譜』は、雪国の風習や逸話、耐雪・利雪の知恵を挿絵とともに書き記した書籍。当時、江戸庶民には北国の生活が異国の印象さえ感じたようだ。雪の日、十数年前に買った解説本『北越雪譜物語』(田村賢一訳著)を書棚から開いてみた。
 ▼わら沓(くつ)や蓑(みの)などの歩行具の説明、吹雪で行き倒れた女の幽霊伝承など興味深い。中でも、雪荒れの日には鮭が大漁になるからと夕刻、再び漁にでた漁師が、妻の用意した松明で命綱が焼き切れ溺死した話に胸が詰まる。
 ▼水量豊富な小川が積雪でせき止められ、一気に低い集落を襲う「水揚げ」と呼ばれる雪中洪水は、溺死者をだす災害として描く。過去の記録は貴重だ。名残雪のように恋を演出する雪も、人命を奪う表情を持つことを北越雪譜は語っている。