秋田県横手市平鹿町浅舞、横手盆地の中央にある「浅舞酒造」では、酒米を蒸した湯気が早朝から立ちこめる。「JA秋田ふるさと 平鹿町酒米研究会」(19人)が蔵から半径5キロ以内で生産した酒米と、敷地内の湧き水だけで日本酒「天の戸(あまのと)」を仕込む。豪雪地帯の寒さを利用する地域に根ざした酒造りは最盛期を迎えている。研究会は、農薬と化学肥料を平均の半分以下に減らし、県の「特別栽培農産物」認証を受けた酒米作りを続けてきた。しかし、秋田市の「太平物産」が成分を偽装した肥料を使用していたため、認証から外れてしまった。特別栽培米使用をうたう酒瓶ラベルを貼り替えざるを得なくなるなど降って沸いた災難だが、研究会では、使用する農薬や肥料を見直す機会と捉え、前に進もうとしている。
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〈写真:蒸し上がった酒米に麹菌を振りかける杜氏の森谷さん(左)〉