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防風林「来年は瀬に立たぬよう安定経営を【2015年12月3週号】」

 ▼関東・東北大豪雨による被害や環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意など、記憶深い2015年も年の瀬を迎えた。
 ▼一般に使う「年の瀬」だが、「瀬」は川の急流の浅い場所をさし、舟が乗り上げると立往生する。年末の支払いに首が回らず、「年の瀬を越せない」などと、昔の人は自嘲ぎみに表現した。
 ▼暮れに多く演じられる落語には、長屋の住人が借金取りを煙に巻いて追い返す「掛取万歳」や、餅屋も呼べない夫婦がさも餅つきのように演じる「尻餠」、財布を拾った亭主が使い込まないよう妻が夢の話にすり替える人情ばなし「芝浜」が多い。貧しい中でも快活な江戸庶民の年の瀬に、つい腹を抱えてしまう。
 ▼現代の12月も、お歳暮やクリスマスで出費がかさむ月との印象が強いが、総務省の家計調査では年末の支出が特に多いわけではなく、入学や就職を控えた3月で若干伸びる。昔は売掛金を月末や年末に回収したものだ。
 ▼米農家も14年産は底値で、「立つ瀬」がない思いをした方も多い。今年産の概算金は増加したものの決して満足な金額ではなく「浮かぶ瀬」とも言えない。来年は瀬に乗り上げずに余裕の一年としたい。