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防風林「こころを忘れたものづくりに将来はない【2015年12月2週号】」

 ▼純国産ジェット機「MRJ」(三菱リージョナルジェット)の初試験飛行が成功した。旅客機としては引退した半世紀も前の「YS-11」以来だという。「ものづくり日本、いまだ健在」との感を新たにした人も多かったのでは。
 ▼他方、マンションの杭(くい)打ちデータ改ざん事件や、JA全農が販売した普通肥料に記載表示と異なる成分が含まれていたなどの問題は、日本製の工業や農業製品の評価を失墜させかねない。
 ▼過去にも、建物構造強度の改ざんや牛肉偽装......など消費者を欺いた事件が発覚し、会社解散やトップ交代などの厳しい社会的制裁を受けたのは遠い昔ではなく、過去の経験が生かされていなかった。工業製品だけでなく食品や農産物を供給する側も含め、安全・安心が業者の生命線との認識を持ち合わせていたはず。
 ▼日本の食文化が世界無形遺産に登録され、環太平洋連携協定(TPP)対策で輸出促進による「攻めの農業」を展開しようとする矢先、施用される肥料成分が偽装されていた事実は農業生産基盤の信頼性さえも問われるだろう。根底には生産農家の汗や努力への軽視があるのでは。
 ▼有機栽培や特別栽培農家に使用者責任を問えるはずもなく、認証取り消しなど農家の経営的な損失は計り知れない。適切な経済的補償や消費者への信頼回復支援も検討すべきなのだ。「こころ」を忘れた利益追求至上主義は、ものづくりの精神を崩壊させかねない。農業資材など関連業者は、再発防止に企業生命をかけてほしい。