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防風林「地名の由来を知ることが災害対策の第一歩では【2015年9月4週号】」

 ▼台風18号に伴う低気圧がもたらした豪雨は本紙報道の通り、死者・行方不明者を出す深刻な大災害となった。穏やかな表情を見せる自然から一転し、憤怒の形相を見せる猛威には、人間の力は全く無力だ。
 ▼昨年の広島県豪雨土砂災害を教訓に、気象庁は今年から、危険性が著しく高まった場合に「特別警報」を発令し、ただちに命を守る行動をとるよう呼びかけている。しかし、この特別警報を有効に生かせるかどうかは、行政や住民の意識で異なり今回も疑念の声が挙がっている。
 ▼市町村の大合併以降、住所表示から大字や字などの地名を省略・変更したり、地番だけに置き換えられたりした地区もある。そもそも地名は地形や過去の出来事から由来するなど、土地固有の歴史が刻まれている場合が多い。
 ▼内閣府の政府広報『みんなの力を、防災の力に』では、「土地の名前の意味を知り、歴史を知ることは災害対策上で重要なヒント」として、「蛇」「竜」「龍」などが使われる地名は、過去に大規模な土砂災害が発生したケースが多いと紹介する。斜面から土砂が濁流のように崩れ落ちる光景を、これら動物になぞらえ示唆してきたのだろう。
 ▼ある県では、河川が頻繁に氾濫する地域を治めた中世期の豪族が「難波田(なんばた)」と名乗った由縁をもつ地名を、数百年たった昭和期に「南畑」と変更した地区がある。近年は、地価やイメージに悪影響だとして、歴史と関係ない「自由」や「希望」など空々しい名称の宅地開発例はあまたある。地名の由縁を知り、各種警報と共にシグナルと認識することが、身を守る第一歩になるかもしれない。