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防風林「戦後70年、経済高度成長期下の農業には大きな変化が【2015年8月3週号】」

 ▼今年は戦後70年。日本人は焼け跡から復興に立ち上がり、重化学工業などの発展を契機に高度経済成長へと押し上げた。都市開発と農村経済を支えたのは、出稼ぎの男たち。営農は「3ちゃん農業」に委ねられ、農薬・化学肥料・農機の普及で収量確保と軽労化が実現した。
 ▼かつて、福島県で循環型栽培に取り組む50代の水稲農家を訪ねた帰り際、彼は「父親から、『農薬と化学肥料を減らして米が作れるのか。絶対に反対だ』と怒鳴られた」と回想する。
 ▼彼は高校卒業後、工場で働きながら父親の米作りを手伝っていた。雑誌で紹介された有機農業の記事に興味を抱く。だが、真っ向から否定された。「親父の米作りは、農協指定の防除暦とNPKの施肥設計がすべてだった」。
 ▼冷害を契機に土壌疲弊が指摘され、求められたのは堆肥や深耕による地力増進だ。父親から「自由にやれよ」と許されたのはその直後。減農薬は近隣農家との軋轢(あつれき)を生んだが、今や安全・安心が求められる時代。
 ▼増産から減反へ、転作から飼料米へと変遷するが、猫の目農政だけは不変。集約化や米価低迷など、戦後70年以降の米作りに不安は多い。息子世代へ安心してバトンを渡していいのか岐路に立っている。