▼農地集積化・団地化を図り、担い手への円滑な農地利用を推進する目的で設立した農地中間管理機構の初年度実績が公表され、同機構を通じ権利委譲した面積が目標の2割(3万1千ヘクタール)にとどまった。
▼関西圏のある担い手農家は数年前、「農地を借したい人はぎょうさんおる。せやけど"畦だけは崩さんといてな"これが一番厄介で多いねん」と嘆いた。集積しても小区画なら畦を崩さなねば機械稼動効率は低いまま。
▼「言われた通りにやって地主の信頼を得なならんしな」。この担い手は大小の農機を使い分け経営を拡大、だがコスト低減効果は少なかった。貸し手の農地への愛着も理解する。耕作者への不信、農地の境界線が不明確な不満、所有権をうばわれそうな不安、などが渦巻くのか。
▼同機構の役割は出し手から農地を借り受け、担い手に転貸する。公的信用を背景に、出し手側の不満や不信も解消するため、権利委譲が円滑に進むはず。だが、目標への道のりは遠い。
▼役職員の意識改革や農地集積をコーディネートできる人材育成も指摘された。相手は農地という資産。信用・満足・安定を感じられる組織作りが急務。サービス業など民間のノウハウを取り入れるのも一考だ。