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サクランボ・ハウス天井の穴から暖気放出 ―― 高温障害防ぎ良質果【山形支局・2015年6月3週号】

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 【山形支局】山形市大森で果樹栽培を営む植木正助さん(79)は、高温障害によるサクランボの品質低下を防ぐため、雨よけハウスの天井に穴を開け、空気の循環により暖気を放出し、温度の上昇を防ぐ仕組みを考案。2012年に特許を取得し、JAの協力を得ながら、商品化に向けて改良を重ねている。
 サクランボの雨よけハウス栽培では、果実の肥大期から収穫期にかけ、温度の上昇が原因で裂果やウルミ果が発生しやすくなる。それを防ぐため、従来の換気装置などを設置すれば多額の費用がかかってしまう。植木さんは構造がシンプルで、自由に着脱ができ、もっと安い方法はないかと試行錯誤を重ねてきた。
 そこで考案したのが、ハウスの天井に長さ70センチ、幅55センチの穴を3メートル間隔で開け、暖気を放出するというもの。防鳥ネットをビニールの真下に重ね、スズメなどの鳥の侵入を防ぐ。さらに穴から入る雨水は、天井の穴から40センチ下に設置したビニールシート(長さ130センチ、幅70センチ)で受け止め、そのシートに取り付けたホースで地面に排水。こうすることで動力を使わずに常時換気が可能となる。
 通常のハウスと穴を開けたハウスとで、収穫期(6月上旬から7月上旬)にどの程度温度差があるのか、JA全農山形の協力を得ながら、5年にわたって計測、比較してきた。平均して3~5度の差があり、外気温の高い日には5度以上低いこともあった。
 同JA生産資材部資材課の伊藤正樹副審査役は「今後も協力していきたい。良い試験結果を出し、商品化に結び付けられれば」と話す。植木さんは「他県にリードできるものを作りたい。農家の助けになるようになるべく安く良いものにしたい。ウルミ果や裂果のため出荷できないということはなく、収穫が多少遅れてもウルミ果は見られなかった」と話す。


〈写真上:植木さん〉
〈写真下:考案したハウスの天井部分。穴の下には、防鳥ネットと雨水を受けるシートを張る〉