ヘッドライン一覧 購読申込&お問い合わせ 農業共済新聞とは? 情報提供&ご意見・ご感想 コラム防風林

防風林「整備計画は災害対策や景観にも配慮を【2015年6月2週号】」

 ▼5年後の東京五輪開催に向け、競技場や関連施設・都市開発の槌音(つちおと)が方々で響く。1964年の前回大会では、堀や運河を首都高速道路で覆い都心の景観は一変した。五街道の起点・日本橋からは日陰の川面と橋脚以外に青空も見えない。地図に残るだけに拙速な計画は後世に禍根を残す。
 ▼江戸期、日本橋の脇に魚河岸、京橋には青物河岸があり活気に満ちていた。船荷を降ろし、さらに小舟で市中に運搬、水辺と暮らしが密着した水運都市だった。
 ▼『東京時代MAP』(光村推古書院刊)は寛永期の古地図の上に、現代地図を描いた半透明紙が重ねられ見比べると興味深い。海を埋めたて高層ビルが、堀も車が往来する道路に変貌した。昔の風景は今や、池波正太郎氏などの時代小説に登場する場面でしのぶだけ。
 ▼関東大震災後、帝都復興院総裁に就いた後藤新平は、大区画再編など震災に強い都市計画を示すが巨額予算で実現せず、二十数年後の大空襲により東京は灰燼(かいじん)に帰す。
 ▼東日本大震災を機に、後藤の計画は高く評価されている。未来の地図には、大震災に備えた安全性や水辺のある景観のほか、住民が「連携・共助」できるシステムも描かれていてほしい。