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防風林「『無限の欲』に支配される消費社会【2015年5月2週号】」

 ▼安倍首相が訪米し、日米首脳会談や米連邦議会での演説に臨んだ。国賓級の扱いで、大統領主催による公式夕食会のメニューなども関心を集めた。安倍首相の地元山口県から日本酒を取り寄せた一方、米国産「WAGYU」のステーキも出された。
 ▼環太平洋連携協定(TPP)交渉に伴う日米2国間協議では米国産牛肉の扱いも焦点だ。譲歩を求める意図を含めたとみても間違いではないだろう。貿易交渉は、笑顔で握手する裏側で自国に有利な条件を確保しようと駆け引きする。互いに利益を得るウインウインの関係構築が重要とされるものの、実質は最小限の損失で最大の利益をとる戦いだ。しわ寄せは競争力の弱い分野に及ぶ。
 ▼経済優先の消費社会が抱える問題が分かると話題の絵本がある。『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(汐文社)だ。今年2月に退任した南米ウルグアイのホセ・ムヒカ大統領が、環境問題などを協議した2012年の地球サミットで行った演説を載せた。
 ▼西洋の富裕社会が持つ傲慢(ごうまん)な消費を世界の70億〜80億人がするのは可能かと問いかけ、環境悪化が止められない背景に消費社会に支配される政治の危機があると訴えた。「貧乏な人は、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のこと」とも。
 ▼大統領は、就任中に給与の大半を財団に寄付し、花や野菜を育てる質素な生活を貫いた。成長ばかりを追求する「無限の欲」とは無縁の人だ。