【山形支局】9年前に家業の酪農を継いだ河北町谷地の槙純一(まきじゅんいち)さん(29)は、家畜人工授精師の免許を取得し、計画的な交配や高比率での雌牛出産などでコスト削減を図っている。
酪農家の長男ということもあって、勤めていた会社を退職し、家業を継いだのが2007年。現在は、両親と一緒に成牛26頭、育成牛17頭を飼育している。
以前、槇さん方では人工授精を外部に依頼していたが、コスト削減のために純一さんが09年に家畜人工授精師の免許を取得。自分で授精を行い、品種や血統を考えながら交配することで、計画的に成牛を入れ替えたり、交雑種を産出し、生乳以外の副収入を得ている。
その一つが、ホルスタインの雌雄判別精液を利用した後継牛の育成だ。
雌雄判別精液とは、値段が通常の精液の4〜5倍と高いものの、特殊な処理を行うことでほとんどが雌の遺伝子を持ち、90%以上の確率で雌が生まれてくる精液。当初は経産牛に使用したが、受胎率は3〜4割程度と低かったことから、自家育成した未経産牛に使用することで受胎率の向上を図っている。
また、ホルスタインの母牛に和牛の精液を授精させ交雑種(F1)を生ませることで、肉用として比較的高い子牛価格の副収入を確保している。
「新しいことにチャレンジしてうまくいったときは、達成感よりもホッとする気持ちのほうが大きいですね」と話す純一さん。失敗がそのまま収入減につながる責任の重さを受け止めた上で、より効率的な経営のため新技術の導入に意欲を燃やす。
〈写真:「ミスが無いように確認は大切です」と話す純一さん〉