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太さ7、8センチの「炭谷ごぼう」―― 次世代へ残したい【香川支局・2015年2月3週号】

150218_04+05.jpg 【香川支局】長くて太い外見からは想像できない軟らかさと香りが特徴の「炭谷(すみや)ごぼう」。今では手に入りにくくなった伝統野菜だ。高松市塩江町の標高600メートルの山間地・炭谷地区で作られ、寒暖差がある気象条件と、この土地独特の軟らかい粘土質に育てられる。
 現在、傾斜地3アールで栽培を続ける唯一の生産者、藤川正雄さん(83)・スミコさん(77)夫妻は「私たちにできるのは、昔から受け継いできた栽培方法で、みんなに喜んでもらえるゴボウを作ること」と話す。
 炭谷ごぼうの栽培は、3月に畑を80センチの深さまで土を掘り起こす「底掘り」から始まる。「土はできるだけ軟らかくした方がいい品質になる」。畑は急斜面にあるため農業機械の導入は難しく、ほとんどの作業がくわなどを使った手作業だ。
 良品生産に向け、雑草は除草剤を使わず手で抜く。夏場は特に過酷な作業となる。昨年は4月に種を播き、12月中旬から下旬にかけて約千本を収穫した。
 「市販の種でも炭谷ごぼうは作れるが、この土地で育った種でないと納得のいくものはできない」と正雄さん。祖父の時代から約200年近く、毎年、自家採取で種を保存してきた。また、ゴボウは連作ができないため10アールの畑を数枚に区切り、栽培する場所を毎年変更し、1年かけてじっくり栽培している。
 藤川さんは「炭谷ごぼうがなくなるのは寂しいこと。畑を引き継ぐ後継者を見つけて技術を伝えつつ、体の丈夫なうちは栽培を守っていきたい」と話す。


〈写真上:炭谷ごぼうの圃場で藤川さん夫妻〉
〈写真下:普通のゴボウは太さ2〜3センチ(右)だが、炭谷ごぼうは7〜8センチもある〉