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防風林「米価低迷の影響が見えないテレビ報道【2015年1月2週号】」

 ▼年明けのテレビで、相次ぐ食品や日用品の値上げのニュースが流れた。アベノミクスで誘導した円安の影響が、原料を輸入に依存する食料品などに及んできた。パスタなど麺類や冷凍食品の値上げに対応した食費の抑制策に米の購入を勧めていた。米農家の気持ちは複雑だろう。
 ▼2014年産米の全銘柄平均の相対取引価格は、11月末現在で60キロ当たり1万2162円であり、13年産米の平均価格比で2182円安い。農林水産省は、ふるい下米の増加などが見込まれると需給が引き締まる可能性を示唆する。しかし、出来秋の概算金大幅引き下げから始まった米価低迷の状況に変化はなく、回復の兆しもみえない。
 ▼13年産米では、60キロ当たり全算入生産費は1万5229円となっている。15ヘクタール以上の大規模層でも1万1424円であり、現在の相対取引価格の水準で利益を出すのは難しい。まして生産費が2万円を超える1ヘクタール以下の層は赤字確実だ。
 ▼食品企業や外食産業は、原材料の上昇分を価格に転嫁できるからまだいい。稲作も燃料や肥料など資材の多くを輸入に依存しているが、米価は市場に左右される。いくら円安でコストが増えても価格に転嫁する手段がない。
 ▼パスタなど麺類や冷凍食品の価格上昇を機に、毎年8万トン前後の減少が続く米の消費が増加に転じる可能性はある。ただ、消費が増えても価格が回復しなければ米農家の生産意欲減退は避けられない。
 ▼低米価を喜ぶ報道には、その先の農業・地域への影響が見えていないのだ。