▼2015年は戦後70年の節目となる。全国紙やテレビも早々に太平洋戦争の検証を始めるなど力を入れる。すでに国民の大半は戦後生まれだ。負けるしかない無謀な戦争に突き進んだ理由などを知っておき、次の世代につないでいく必要がある。
▼だるまちゃんシリーズや『どろぼうがっこう』などで知られる絵本作家のかこさとしさんは、自叙伝の『未来のだるまちゃんへ』の序文で、「終戦」ではなく「敗戦」と強調する。「戦争に負けて、てのひらを返すように態度を変えた大人たちを見て、ものすごく失望憤激した」との理由からだ。
▼ただ、かこさん自身は中学2年生のときから軍人志望で、戦争が終わるまで誤った判断のままで愚かだったと明かす。飛行機乗りになって特攻で死んだ同級生もいるという。実体験があるから言葉に対しても思いが強いのだ。
▼厚生労働省は、海外戦没者を約240万人とする。記録がなく検証は困難だが、前線では戦闘よりも病死や餓死の数が多い可能性が指摘されている。補給が軽視され、前線の兵士に十分な武器弾薬や食料、医薬品が行き渡っていなかったとの記録や証言は多い。
▼強気の指導者のもと集団的自衛権の行使容認など"戦争のできる国"へと準備が進む。しかし、本当に「この道しかない」のか、節目の年を迎える機会に立ち止まって検証し、道の先に何があるか考えるべきだ。