獣害対策は、トタン、電気牧柵など水田を囲むことで侵入を防ぐこと以外、これといった防除方法がないのが現状。とっとり版で取り上げた4組は、ちょっとしたアドバイスを自分のものにして被害を最小限にとどめようと、防除に取り組んでいる人たちだ。
(1) 八頭郡河原町の漆原誠一さんは、イノシシが火や油のにおいを嫌う習性を利用している。ビールの空き缶に灯油を入れ、青竹の中にバインダーのひもを通して芯を作り、雨除け用にトタンを上につけたもの。
イノシシが侵入しそうな場所に、2〜3メートル間隔に打ち込む。火は、缶の油の量を加減し、危なくない範囲で使用する。
ポイントは、必ず青竹を使用すること。青竹は火が燃え移らない。また、芯を出す長さで火の加減が調節できる。多少の雨、風なら大丈夫。特に稲架時には効果があり、昨年は稲架の稲には寄り付かなかった。「周辺の草を刈るなど手入れも忘れずに」とのこと。
(2) 鳥取市の田中義美さんと妻の止子さんは「たばこの吸い殻」をネットに入れ、雨・露を防ぐために、ナイロン袋を掛けてつるすといった簡単なものだが、この簡易防除対策に満足そうだ。たばこの吸い殻、ネットなどは、家にあるものを使っているので、経費はかからない。
ネットを作物にくくり付けるほか、畑のあちらこちらに、吸い殻を放置している。
(3) 日野郡日南町の吉原秀雄さんは、県外で猟師をしていた知人から「イノシシの皮を焼くと、においを嫌ってイノシシが来ない」と言われた。
早速、町内の猟師から皮を分けてもらった。以前は皮に火をつけて燃やしてのその場限りの防除だったが、吉原さんが考案したのは、空き缶に灯油を入れ、木綿の布で芯をつくり、イノシシの皮を焼く方法。缶の上に雨除けも作り、多少の雨なら大丈夫だ。
「イノシシの皮は、ほとんど脂身なので、金網をかぶせることと、風上に設置することがポイント」と吉原さん。一晩中、煙が出るようにしている。一度イノシシが入った田でも、ぱったりと来なくなったという。
イノシシは、大変鼻がきき、きついにおいを嫌うことと、縄張り意識があることで、他のイノシシのにおいを嫌うのではと考えられている。
(4) 鳥取市の山本隆太郎さん、三友里さん夫妻は、近所の人がイノシシ対策として、夜にランプを付けて田に置いているのを見て、「イノシシは光に警戒して、入って来ないのか」と思ったという。
山から丸太を切り出し、電線を張り、豆電球を取り付けた。電線を引く作業は業者に頼んだが、後はすべて山本さん夫妻二人で取り組んだ。
1カ所のスイッチで一度にすべての電灯がつき、管理は大変楽。イノシシの侵入しそうな場所には、センサー付きライトも取り付けた。
「設置費用がかかりましたが、長い目でみて、管理も楽で、電気代はあまりかかりませんから、トタンや、電気牧柵よりも安く感じています」と山本さん。