家畜市場で、あるおじいさんに「堆肥出しが大変になったから牛飼いをやめる」と言われたその一言がきっかけで、堆肥搬出機を製作したのが江刺市藤里外ノ沢の菊池栄孝さん。
ヒントとなったのは温泉などの宴会場を仕切るレール付きの壁。製作は1週間ぐらいだが「考えをまとめるまでが大変でした」と菊池さんは話す。
構造は簡単でハンガーレールに複車をつけ、ドラム缶を半分に切断したものを吊(つ)り下げるだけ。これに堆肥をのせて外へ搬出し、レバーを引くと重みでドラム缶部分が横に倒れ、中の堆肥が下へ落ちる仕組み。レールが畜舎内から外へ延びているため、一輪車を押す労力が削減でき、繁殖牛七頭を飼養する菊池さんがこれまで六時間ぐらいかかっていた堆肥出しも今では2時間もあれば終わってしまうという。
経費面でもレール部分の資材を購入しただけで、ほかは廃材を利用したため2万9000円と格安。菊池さんは「この堆肥運搬機を皆さんに取り入れてもらって少しでも労力を軽減して『堆肥出しが大変だから』と言った理由で牛飼いをやめる人がいなくなるよう願っています」と話している。
(写真:菊池さんが考案した堆肥搬出機)